2020


ーーーー 8/4−−−− 洗面所の収納をリニューアル


 
先週記事にした洗面所の出水事故には、余禄が付いている。水浸しになった備品類を室外に持ち出して乾かしたり、整理したりしたのだが、次女がこの機会に洗面所の収納設備をリニューアルしたらどうかと言い出した。

 巷の安物家具店には手頃な収納棚が置いてあるから、合うサイズの物を買ってくれば、格段に使い易くなると。ちなみに現状は、使い古しのベビータンスやプラスチック製の小棚などを組み合わせ、その場しのぎ丸出しという感じで使っている。

 長女も、自宅の収納を引き合いに出して、いろいろなアイデアを提案した。しかし、たかが棚とは言え、安物家具を購入するのは、私としては抵抗がある。そこで、自作するという線で急激に話がまとまった。娘たちが滞在している間に製作し、収納を完了するスケジュールとなり、許される製作日数は二日間。早速現場の寸法を測り、設計に取り掛かった。

 翌朝、次女と軽トラで出掛けて、まず100円ショップで収納ボックスやトレイを購入した。次女はこういう事が大好きだと言う。それからホームセンターに回って、ツーバイフォーの木材と、棚板に使う合板を買った。自宅へ戻ると、買ってきた収納器材の寸法に合わせて、図面を修正した。こういう計画に関しては、長女が俄然張り切り、アイデアを連発して取り仕切る。設計が確定して、いよいよ製作開始。

 とにかく時間勝負なので、なるべく簡単な構造にした。部材接合部は、ホゾを使わず、ビスケット・ジョイントを用いる。これで大幅な時間短縮となる。今回の用途なら、強度的な問題も無い。加工精度は、それなりの工夫をすれば、荒いホゾ加工よりピッタリ仕上がる。搬入に難があるので、側面の構造のみ工房で組み立て、全体は現場で組むことにした。現場はネジ止め。狭い現場でいきなり組むのは精度的に問題があるので、一旦工房で仮組みをした。

 製作を開始してから二日目の正午頃、部品を洗面所に運んで組み立てた。周到な準備のおかげで、現場作業はスムーズに進んだ。棚板もピッタリ収まり、娘や孫たちに職人らしさを見せつけた。婿殿(長女の旦那)は、「たった二日間でこれだけのものを作るとは、凄いですね」と言った。長女のお宅には、これまでいくつも家具を納めた。品質については満足頂いているようだが、今回は別の意味でアピールできたようである。

 時間勝負の製作だったので、鉋もかけず、面も取らずに組み立てた。すると長女がサンドペーパーを使わせてくれと言い、ペーパーがけを始めた。こういう作業が好きで、自宅でも床板の表面が荒くなると、よくペーパーがけをしていると。こ一時間の作業が終ると、棚は一段と見映えが良くなった。

 棚が出来上がると、娘たちがタオルや衣類を収納ボックスに入れて整頓し、名札を張り、次々と相応しい位置の棚に納めた。見違えるほど綺麗で使い易い収納になった。また、余計な物が無くなったので洗面所が広くなった。部屋の中は、木の香りが溢れた。

 連日の雨降りで、家の中に閉じこもったままの連休だったが、出水騒ぎのおかげで、思いがけずクリエイティブな共同作業ができた。

 



ーーー8/11−−− 紛失したCD


 
だいぶ前から、2枚組みCDのうちの1枚が無くなっている。お気に入りの、モンテヴェルディ作曲「聖母マリアの夕べの祈り」、J.E.ガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツの演奏である。

 CDが無くなるという事例は、これまでもあった。聞き終えて仕舞うときに、間違って別のCDのケースに入れてしまうのである。そこには本来のCDが収まっているから、2枚重ねることになる。重ねれば、違和感に気付きそうなものだが、意外にそういうことをやってしまう。無くなった場合、探すのも厄介である。どこに入れたか分からないから、片っ端からCDケースを開いて調べねばならない。それが面倒なので、そのうちに出てくるだろうと、放ったままにすることもある。未だに行方不明のCDがいくつかある。

 お気に入りの曲だから、時折りどうしても聴きたくなる。そういう時は、手近なCDケースを順番に開けて探すのだが、見付からなかった。ひょっとしたら別の理由で無くなったのかと思い始めた。CDプレーヤーは、現在我が家に2台しかない。そのうちの1台は壊れかけていて、ほとんど使われていない。それに入れたままになっているかと調べたが、無かった。車のオーディオは日常的に使っているから、そこに入れっぱなしという線はありえない。

 ある事を思い出した。軽トラのオーディオを入れ替えた時に、販売店の店員が、オーディオ装置とダッシュボードの間に僅かな隙間が生じ、間違えてそこにCDを入れてしまう人がいるので注意して下さいと言った。そんな事はありえないと思ったが、可能性がゼロではない。オーディオ装置をダッシュボードから外して、奥を調べて見た。すると1枚のCDが見付かった。しかしそれは、別の曲だった。

 捜す行為に限界を感じたので、新たに購入することにした。パソコンで調べたら、同じアルバムが見付かったので、購入手続きをした。それが終ってから、何気なくパソコン本体の箱を見たら、CDスロットが目に付いた。スロットのボタンを押してトレイを出したら、ディスクが1枚乗っていた。捜していたCDだった。

 パソコンでCDを聴くことは滅多に無い。だから入れたことも忘れ、置き忘れた事に気が付く機会も無かったのだ。それにしても、ほんのわずか早くその動作をしていれば、余計な買い物をせずに済んだのに。なんとも口惜しい結末となった。

 しかしこれで2セット所有することになったので、また紛失する事態が起きても大丈夫だ。だが、きっとその事態は発生しないという、確信めいた予感がある。




ーーー8/18−−− マツタケ山で水撒き


 
7年ほど前から、地元有志でマツタケ山の整備をやっている。林内の地面の腐植層をかき取ったり、不要な広葉樹を伐採して片付けたりという作業を、毎週土曜日の午後に行う。その作業は基本的に大切な事であるが、それをやっているだけでマツタケの安定的な収穫が期待できるか?という不安、疑問が生じてきた。実際のところ、山の作業を始めてから何年も経つが、まとまった量の収穫を見たことは、これまで無い。

 マツタケの発生は、気象に大きく左右される。簡単に言えば、8月中旬頃から9月下旬までの間に、繰り返しある程度の降雨があり、さらに9月に入ってから順調に気温が下がっていくことが好条件とされる。これに反して、降雨が少なかったり、暑さの戻りが繰り返されたりすると、マツタケはさっぱり出なくなる。このような悪い条件が、ここ数年続いている。背景には、温暖化をはじめとする異常気象があると思われる。マツタケの生産地が、徐々に北へ移動していることも、それを裏付けているのではなかろうか。

 我々の山で近年不作が続いているのは、ズバリ降水不足のせいだと思われる。気温の状態は、数十キロ程度離れた場所でもさほどの違いは無いが、降水量は僅かに離れた場所でもかなり変動することがある。数キロ先では激しい夕立があったが、この地では全く降らなかったなどということがよくある。また、山の状態、例えば植生の違いなどによって、降水が地面の湿りにおよぼす影響が変わってくる。木陰が無く、直射日光に曝されている裸地では、少々の降水があっても焼け石に水ということになる。我々の山は、複合的な要因により、降水が不足して地面が乾燥し過ぎていると推測される。

 そこで、2年前からポンプを使って散水することを始めた。山の麓に用水路が通っているので、その水をエンジン式ポンプで汲み上げて山の斜面に撒くのである。用水路わきの作業道にホースを引き回し、届く範囲に放水する。筒先から30メートルくらいしか飛ばないが、それでもかなりの有効な手段であるという感触を得た。

 昨年は、山の斜面に別のポンプとタンクを担ぎ上げ、二段方式で散水することを試みた。こうすれば、高さ40メートルくらいの所で放水できる。しかし実際に設置作業を始めてみたら、言うは易し、行うは難しという現実に直面した。 

 用水路わきのポンプから、直径50ミリのホースで中継タンクに送水するのだが、ポンプをフル稼働しても水が上がらない。そのうちポンプがチンチンに過熱した。ポンプの性能からすれば、その標高差を上がらないはずがない。いったいどうしたことか? いろいろ試行錯誤をした挙句、原因はホースの折れ曲がりだと判明した。垂直に伸ばしたホースを、作業道に沿って水平に引くと、その場所で折れ曲がる。するとその部分で抵抗が生じて、流れが滞ってしまうのである。後になって考えれば当然の現象だが、経験者のいない集団にとっては、そんなことも分からなかった。それに気付いてから、ホースが真っ直ぐになるようにルートを変更し、タンクに注水することができた。

 次のトラブルは、こうである。いったんポンプの運転を中止し、再びスタートしたら、水が上がらない。またすぐにポンプが過熱した。原因は、ホースに溜まった水が圧力を発生させ、ポンプの吐出を阻害したのである。そこで呼び水を入れるキャップを外して、水を抜いた。キャップを取り外した瞬間に水が激しく噴き出して、周囲のメンバーはずぶ濡れになった。

 こういうこともあった。放水を開始すると、水の重さでホースが斜面をズリ落ちる。それを元に戻そうとしても、加圧水でパンパンに膨れ、硬い棒のようになったホースは、びくとも動かなかった。また、放水を終えてポンプを停め、水抜きの操作をすると、ホースは末端から徐々に扁平になっていく。そして暫くしたら、突然ホースが猛然と斜面を突っ走って落ちていった。下にいたメンバーに危うくぶつかるところだった。ホースの下の方が重くなり、引っ張られて落ちたのであった。

 ホースがズリ落ちるのを防ぐため、紐で立ち木にくくり付けた。通水すると、ホースの重みで紐が絞まり、抵抗が生じて流れが悪くなった。それを防ぐ手段として、固定部分はホースを切って金属パイプのコネクタで接続し、そのコネクタを紐で縛ることにした。

 ホースの扱いがこれほど厄介だとは思わなかった、というのがメンバーの共通した感想だった。それでも一つずつトラブルを解決するうちに、ポンプアップのシステムが整い、散水が滞りなくできる様になった。

 今年は、初段のポンプを高性能のものに変えた。それで、さらに上部、標高差で60メートル上までホースの先端を伸ばせる様になった。斜面の上の方でサーッと放水するのは、夏の暑さをしばし忘れるほど気持ちが良い。中腹に据えたタンクに、ゴボゴボと音を立てて水が注ぎ込まれる様子を見るのも、清涼感がある。メンバーが水利権を持っているので、水はいくら使っても構わない。心行くまで散水することができる。

 しかし、いくら張り切って水を撒いても、人がやることには限界がある。夕立や台風などの降水に比べれば、絶対的な量に違いがある。この先9月の末あたりまで、祈るような気持ちで空を見上げる日が続くだろう。





ーーー8/25−−− メタボの宣告


 この7月に、10年ぶりくらいで人間ドックを受けた。私は、市から送られてくる定期健康診断すら全く受けたことがないという、怠慢派である。人間ドックなど頭の隅にも無かった。それが急に受診することになったのは、いかなるわけか? 答えは、コロナによる定額給付金である。予定外に転がり込んできた金だから、普段は考えもしない事に使おうとと思った。そこで候補に挙がったのが人間ドックだった。もちろん、給付金のほんの一部しか使わないが。

 目星を付けた総合病院へ、予約の電話を入れた。胃カメラを含む検診だと、年内は予約が一杯だと言われた。バリウムだと、7月中で空いてる日は一日だけで、それを外せばお盆過ぎになるとのこと。なんでこんなに人間ドックが混んでいるのだろうか? ともあれ7月の日を予約した。

 ある人に、「久しぶりで人間ドックを受けることになりました」と話したら、「それは良かったですね。きっと何か見つかりますよ」と言った。この歳になると、自分では気が付かなくても、何かしら体に異常があるものだ。それを明らかにしてくれる検診は、ぜひ受けるのが良いという説である。

 ドック当日、病院内をあちこち行かされて、2時間ほどで検診は終った。しばし待たされた後、医師との面談があった。その時点で得られたデータに基づき、所見を伺うのである。開口一番医師は「内臓脂肪が多いので、腹部超音波検査の精度が低くなっています」と言った。厚い脂肪のために超音波が通りづらく、鮮明な画像が得られないと言うのである。そして、このままメタボを放っておけば、肝硬変や糖尿病になる恐れが高いと言った。さらに、運動も大事だが、食事の量を減らすことが確実なメタボ対策になると力説した。よく患者の中に「これだけ努力をしているのに、メタボが改善されないのは何故でしょうか?」などと言う人がいるが、そんな事を聞かれても困る。努力が足りないだけであると、厳しい口調で述べた。

 その後、保健師との面談もあった。「ドクターから厳しいことを言われましたか?」と切り出したところをみると、先ほどの医師は辛口の御仁のようである。メタボを厳しく指摘されたことを話し、ついでに「上半身は痩せているのに、お腹や下半身に脂肪が付いていて、見た目にも不細工です」と心情を吐露した。すると保健師は、日本人は欧米人と比べて太り方が上手でない傾向があるようだと言った。欧米人は、全身が丸々とした肥満体でも血液検査の値などは正常という人が多いけれど、日本人は見た目にさほど肥満ではないような人でも、けっこう数値が悪い傾向があると。私はまさに自分のことを言われている気がした。

 自宅に戻ってから、検査結果をあらためて見たら、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値が高い以外は、特に問題となる点は無いように思われた。中性脂肪も、空腹時血糖も正常値だった。心配した肝臓の機能も、問題無かった。くだんの医師のコメントは、ちょっと大袈裟だったような気がした。しかし、メタボであることは間違いない。医師は適正体重より10Kgオーバーしていると言った。よし、ひとつメタボ解消に挑戦してみるか。

 翌日から食事の量を減らした。これまでの半分以下の盛りにした。間食、おやつは一切止めにした。裏山登りのトレーニングも、従来はせいぜい一日おきだったのを、毎日行うようにした。そのようにして一ヶ月経ったが、ようやく2Kgほど体重が減っただけである。

 まだ短期間で、成果はいま一つだが、これまでの努力に対しては、自分で褒めてやりたい気もする。しかし、かなりインパクトがあると言われているある対策に関しては、一向に力が入らず野放しになっている。それは酒である。だいぶ前だが、ちょっと体調が悪くなり、病院で検査をしてもらったことがある。私が、「最近体重が減少ぎみですが、お酒を控えめにしていることと関係ありますか?」と言うと、応対してくれた女医さんは「お酒を止めれば劇的に体重は減りますよ」とキッパリ言い切った。

 最近カミさんは、「あなた本当にお菓子を食べなくなったわね」と言う。「あなた本当にお酒を飲まなくなったわね」と言われる日が来るだろうか?